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ガチャポン訴訟を考える(2)「知識循環型社会」

前回記事「ガチャポン訴訟を考える(1)『安全基準は守ったが』」の続きです。

◆過去の事故

次の記事は1996年5月の「ASP NEWS」からの引用である。(元記事は「たまご」「幼児」「のど」で検索すると、G o o g l e のキャッシュで見られます。)

■卵形おもちゃ幼児ののどに/長野 御代田町で1月に入院、メーカー側改良へ

 卵を半分に切った恰好のスチロール樹脂製のおもちゃが幼児ののどに詰まり、呼吸困難に陥る事故が、長野県北佐久郡御代田町で起きていたことが、18日までに分かった。県上田消費生活センター(上田市)の指摘を受け、製造元のおもちゃメーカー(東京)は近く、全体をやや大きくして口に入れにくいよう改良した商品に切り替える方針だ。
 このおもちゃは、直径約4センチ、高さ3センチほどのほぼ半球形のものが2個で1セット。合わせると卵の形になる。10年ほど前から、ままごと遊び用に全国に出荷している。
 事故は今年1月に発生した。4歳の兄と一緒に遊んでいた2歳の男の子が、この半球を飲み込み、窒息状態になってしまった。両親がすぐに取り出したものの、呼吸が弱まりぐったりし、8日間入院した。
 母親から相談を受けた県上田消費生活センターは、おもちゃの注意書きに「対象年齢は3歳以上」と明記してあり、誤って飲み込んだときの対策としての通気用の穴も開けてあったことから、「欠陥があるとはいえない」と判断した。が、製造メーカーに事故の報告をし、「改善できる点があれば直して欲しい」と申し入れた。
 これに対し、メーカー側は3月、卵を縦半分に切った形にし、全体をやや大きくすることで、いちばん長い部分が6.5センチと従来品より2.5センチほど長くなるように手直しすることを決めた。改良品は7月頃から生産を始める予定だ。がん具の担当者は「今回のような事故の連絡があったのはおそらく初めて。こうした事故が起きる可能性があることが分かったので、より安全なものに設計し直すことにした」と話している。
 同社は、昨年7月に製造物責任法(PL法)が施工された後、通気用の穴を開けたタイプに改良していた。これまでの出荷分については「欠陥があったわけでない」としている。

半球形という違いはあるが、ガチャポンカプセルと同様、プラスチック玩具の誤飲事故である。大きさもかなり近い。
こちらのメーカーは、事故報告を受けて製品の改良に取り組んでおり、企業の対応としては充分なものだろう。
だが、その経験は他のメーカーに生かされなかった。
もし、この1996年の事故の情報が業界全体に共有され、安全基準の見直しにまで進んでいたら、2002年のガチャポン誤飲事故は防げていたかもしれない。

◆リスク情報の公開と知識の共有化

事故は、リスク要因がある限り、必ず繰り返す。
モグラたたきのように当該商品の見直しをおこなうだけでは、似た構造の商品が残ることになり、いつまでも事故の発生は運任せという状況を放置する。

必要なのは個々のケース対応で終息するのではなく、業界全体にリスク情報が公開され、安全基準の見直しなどに反映されるようなシステムの構築だと思う。
国民生活センターや各都市の消費生活センターがその役割を担っているはずなのだが、個々のケース対応で終わってしまい、結果として、別のところで同じような事故が起きるということが繰り返されている。

と、思ったら、感染症のサーベイランスシステムのような医療機関による事故サーベイランスシステムを作ろうとする動きがあるようだ。
「事故サーベイランスプロジェクトシンポジウム」
http://www.dh.aist.go.jp/projects/child/symposium/index.html

『子どもの事故予防情報センター』も、情報の公開による事故予防の環境づくりを目指しているそうだ。そこでもサーベイランスシステム構築の必要性が述べられている。(上記のプロジェクトにも関わっているようだ)
『子どもの事故予防情報センター Safety Site』(ここは必見!)
http://www.jikoyobou.info/

確かに、現状のように被害者が声を上げなければ情報が埋もれてしまったり、声を上げただけで叩かれる状況では、医療機関による調査監視が有効かもしれない。(重症例は必ず医療機関を通るのだし)
そしてサーベイランスに基づいて、業界が自主的に対応するか、あるいは行政による勧告ということになるのかな。

事故サーベイランスプロジェクトが知識循環型社会という概念を掲げている。その理念を以下に引用する。

*責任転嫁型社会から責任分担型社会へ
 「俺は悪くない」ではなく「もっと,何かできるはず!」
 「悪い奴を探そう」ではなく,「自分なら何ができるか」

*被害者の声を無視しない・無駄にしない社会
  不幸にして生じた事故情報を人類共有の知恵として蓄え活用できる賢い社会

http://www.dh.aist.go.jp/projects/child/symposium/junkan.html


さらに続きます…(汗)

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