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私が「クリスタルチルドレン」に懸念を持つわけ

6月も半ばに入ろうとしているのだけれど、相変わらず「クリスタルチルドレン」で検索してくる方が多いんですね。
つうか、そればっか…(汗)
実は、このブログへのアクセスは、そのほとんどが先日あげたエントリ「NHKでクリスタルチルドレン」へのものなんですよ、他の記事はスルーですよ、奥さん(泣)
それだけ「クリスタルチルドレン」という言葉が世間的に関心を持たれているってことなんですかねぇ。

ただ、先日の記事は、どうもハマる人を揶揄していると思われてしまうようなので、改めて何を懸念しているのか、かなり前エントリと被りますが、まじめに書いておこうかと思っています。

まず、「クリスタルチルドレン」についてのおさらいですが、これはNHK「みんなのうた」の4・5月の歌として放送された3曲のうちの1曲です。
NHK「みんなのうた」の4・5月の歌

一見ただの反戦歌にしか見えないこの曲ですが、実は、タイトルに使われている「クリスタルチルドレン」という言葉は、エンジェル・セラピーを創設したドリーン・バーチューという人が唱えている、いわゆるスピリチュアルというか、かなりオカルティックな概念を持つ用語でもある、ということは前回のエントリで書いたとおりです。

ただし、曲そのものは先程も述べたように普通の反戦歌ですし、NHKのサイトにもスピリチュアルについての言及はありません。
なので、はっきりとドリーン・バーチューとの関連を指摘することは出来ません。

しかし、「クリスタル・チルドレン」と言う言葉はドリーン・バーチューのサイトを見る限り、彼らの思想にとってかなり重要な位置を占めています。
したがって、この言葉だけで彼らの思想に簡単にアクセスできてしまうことになります。つまりググるだけで、ね。

いくらスピリチュアルに関心があると言っても、元々ドリーン・バーチューを知っている方は少ないと思うのですよ。
そういう、なんとなくスピリチュアルな人々をこの歌は引き寄せてしまう。
いや、スピリチュアルという意識もなくただ曲に感動してアクセスして、曲の感動を引きずったままバーチューの思想を鵜呑みにしてしまう可能性も否定できないと思っています。

もっとも、スピリチュアルやオカルトで何が悪いっていう意見もあると思うんですね。
なので、ドリーン・バーチューが言うところの「クリスタルチルドレン」についての問題点も指摘しておこうと思います。
私が懸念する問題点は次の2点です。
(1)必然的に子供を巻き込むこと
(2)自閉症という障害に関する理解を妨げること

(1)ですが、本人の中で完結しているのならスピリチュアルだろうがオカルトだろうが、アトランティスやムーの転生だろうが遊星からの物体Xだろうが、まあ、仕方ないか、というところはあります。それが本人の癒しになることもあるでしょう。
ところが、「クリスタルチルドレン」の場合、投影の対象は子ども達なんですね。

幼い子どもにとって、親は絶対です。
親の価値観がどうであれ、子どもは疑問を差し挟むこともできません。
だから、親がどんなに「感動」しようとも、子どもに与える場合はもっと慎重になった方がいい。
少なくとも、これが一般的には「オカルト」と言われるものであることは意識しておいてほしいと思います。

それに、バーチューのサイトにはこんな文章があります。

クリスタルチルドレンは、多くの点で理想的であり、人類が向かっている方向を指し示してくれています。そして、それは、正しい方向なのです。
これ、親が子どもに投影するには、あまりに重すぎる理想ではありませんか?

さらに、「スピリチュアル」にはよくあることなんですけれど、バーチューの思想にも外的な困難を自分の内面の問題にすりかえてしまうという面があるようです。そして、批判を悪いことだとする教えもある。(例えば「天使から学んだ10の教訓」というページには「3. もめごとは、すべて心の投影。」「8. 批判しない。」「9. 意識の持ち方が人生を決める。」という項目があります。)

これでは、子どもに高い理想を押し付ける一方で、「批判するな」というメッセージを送ることになるんですね。しかも、問題が起こるのは自分の心の持ち方にある、という。
このような思考様式は、親には都合がいいかもしれませんが、子どもにとってはかなり抑圧的に働くものです。

こう見てみると、「クリスタルチルドレン」の歌詞にある「戦わなくていいんだよ、好きになっちゃえばいいんだよ」「憎しみも涙に代えて、許せる勇気持って生まれてきたんだ!」という言葉も、自分の内面のみを問題にしている(自分が心地よく感じれば問題は解決する、他者に対する視点がない)という点で、非常にスピリチュアル的といえるかもしれません。

親の言葉は子どもにとっては呪縛にもなりうるものですから、慎重でありたいですよね。

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(2)の自閉症の理解については、長くなったので別の機会に書こうと思います。ただ、いつになるやら…。

なお、「みんなのうた」の「クリスタルチルドレン」については、ツカサネット新聞の以下の記事やPSJ渋谷研究所Xさんのところのエントリによくまとめられています。

「クリスタルチルドレン」とは何か?-スピリチュアルな世界へ【前編】
(ツカサネット新聞 2008年05月20日)
http://www.222.co.jp/netnews/article.aspx?asn=16814
「クリスタルチルドレン」とは何か?-ドリーンとエンジェル・セラピー【後編】
(ツカサネット新聞 2008年05月21日)
http://www.222.co.jp/netnews/article.aspx?asn=17018

PSJ渋谷研究所Xさんのエントリ「○○の歌が毎日さりげなく放送される。オッケー?」
http://shibuken.seesaa.net/article/96325193.html
同「クリスタルチルドレンとは何か」
http://shibuken.seesaa.net/article/97447175.html

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コメント

お初ですにゃ。
このエントリを
http://d.hatena.ne.jp/tikani_nemuru_M/20080808/1218164952
の記事で紹介させてもらったので、トラバを送ろうとしたのだけれど、何度やってもダメですにゃ。
というわけで、コメント欄でお断りさせていただきましたにゃ。

投稿: 地下に眠るM | 2008年8月 8日 (金) 12時18分

地下に眠るMさん、はじめまして。
コメント&トラバありがとうございます。

トラバは「受付」で設定しているのですが、なぜか承認しなければ表示が出来なくなっているようです。
おくればせながら承認して表示するようにしました。

旦那の実家に帰省してまして、ネットを確認できず対応が遅れました。よろしくご了承ください。

投稿: くりず | 2008年8月11日 (月) 01時00分

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受信: 2008年6月12日 (木) 12時06分

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今回は、前回エントリで書き残した懸念、クリスタルチルドレンという概念が「自閉症と [続きを読む]

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