前回に引き続き、といってもずいぶんと間が空いてしまったんですが…、「クリスタルチルドレン」という概念が自閉症に対する理解を妨げることについて、もう少し述べていきたいと思います。
実は、これについて興味深いブログのエントリを見つけました。
http://blog.goo.ne.jp/manaworld/e/0070bcdab0e6db3ae00005c405c84940
こちらの方は自閉症のお子様がいらっしゃいます。
精神世界には親しんでいらっしゃるが、クリスタルチルドレンには批判的な見解をお持ちのようです。
しかし、方便としての有用性をあげているんですね。
ジェームス・トワイマンのコンサートで、彼が言っていました。「今の人は、ラベルに弱い。クリスタルチルドレンや、インディゴチルドレンとラベルをつける事で、受け入れてくれる人が増えている。個人的には、子供にラベルをつけるのは嫌いだけど、今、しばらくの間、ちょっとの間、ラベルは必要なんです」
一言、今の時代は、そういう人が大半の、そういう社会だってことです。
物質至上主義の社会、特有の対処法だなぁ。。。と思いました。
つまり、『発達障害』と言ったら世間は受け入れないが、『クリスタルチルドレン』と言えば温かく受け入れてくれるということでしょう。
ウソも方便ってヤツでしょうか。
しかし、これについては残念ながら疑問を抱かざるを得ません。
「クリスタルチルドレン」を信奉する人の目的は自分自身の癒しであって、『発達障害』に対する理解ではありません。彼らの望むものはあくまでも自分の理想を投影できる『クリスタルチルドレン』であって、実際に子どもが「発達障害」かどうかはそもそも関心の外なのです(親以外は)。
ですから、彼らは自閉症児を『クリスタルチルドレン』と言い替えてしまえばそれで満足なのであり、実際の自閉症について理解を深める方向へのモチベーションは生じないと思います。
したがって、バーチューの『クリスタルチルドレン」についての説明が実際の自閉症児の特徴とあまりに乖離しているにもかかわらず、信奉する人々はそのことに疑問を覚えることもないですし、またその必要性も感じていません。
ましてや、重度の自閉症児のことなど、始めから彼らの眼中に入っていません。仮にその存在を目にしたとしても「あの子はクリスタルチルドレンではない」と思うだけでしょう。
実際、バーチューのサイトには親御さんのコメントとして「本物の自閉症とは違う」という表現もあります。
私の目から見ると、本物の自閉症とは違う印象なのです(単に軽症ということかもしれませんが)。
ttp://www.jma-inc.jp/blog/user/doreen/taiken/465.html#comments
また、ブログでこんなエントリも見つけています。引用先は示しませんが。
「(前略)T君はクリスタルチルドレンで自閉症ではありません。T君に病院は必要ないです。
とても、純粋で大きな優しさと愛情を持って生まれてきている子ですよ。お父さんとお母さんを守る為に来たと伝えてほしいと言われました」と話した。(強調は引用者による)
このように、『クリスタルチルドレン』という概念が広がったからといって、実際の自閉症児やその家族への態度が温かくなる保証はまったくありません。
むしろ、実態を指摘することは、彼らの「心地よさ」を否定するものとして排斥される可能性が高い。
以下の引用も、クリスタルチルドレンに言及していたブログから拾ったものです。同じく引用先は伏せます。
発達障害とか言われる事が多くあるそうですが、それって誰の基準?っていつも思うのです。
大人たちも余裕がないから、なんとか病気にさせたいのでしょうか?
そして納得させたら気が済むと思ってるのでしょうか?
まず、「概念」が極端に違う為、親御さんの理解が無いと、普通におかしい子になってしまします
多動とか、AD/HDとか言われるお子さんのほぼ6割から7割にかけてが、薬物で処理されようとしています
この子達は、潰される為に生まれてきた訳ではありません
未来へ花開く為に生まれてきています(強調は引用者による)
最近は本当にいろいろな枠を作って、そこからはみ出している子供達を他の枠にはめたがるようです 少しでも勉強についていけなかったりすると、それだけで言語障害や発達障害というように「普通ではない」と決め付けられて・・・
これら、『発達障害』に対するネガティブな表現の数々は、書き手が元々障害に対して持っていた偏見を図らずも露呈させてしまった結果とも言えるのですけれど、やはり、理想の投影対象である『クリスタルチルドレン』との対比からくるものとして考えるべきだと思います。
つまり、『クリスタルチルドレン』を賞賛しようとすればするほど、『自閉症』『発達障害』という診断が許されざる行為になる。
『障害者』と認めることが忌避すべき行為になる。
このように「クリスタルチルドレン」という概念は、世間の障害に対する認識を改めるのではなく、却って『障害』に対するネガティブイメージを強調する方向に働くのです。
特に、学校現場において『クリスタルチルドレン』という概念が広がったらどうなるか。
子ども達の間で、障害児の選別が起こるのではないか。
「あの子はクリスタルチルドレンだから大切な子」「あの子は本物の自閉症だから私たちと関係ない」という風に。
そして、これが重要なのですが、バーチューのいう「クリスタルチルドレン」の定義に当てはまるような自閉症の子どもはほとんどいないのです。(注)
また、AD/HDの薬物療法に対する偏見も、実際に学校現場で薬を服用している子ども達へのプレッシャーが強まるのでないかと危惧します。
周囲の子どもだけでなく、教師が服用に理解を示さない、という事態が起こらないことを切に願わずに入られません。
AD/HDの治療についてはこちらのサイトを参照していただきたい。
「AD/HDナビ」(特に「体験談を聞く」というページがわかりやすい。)
http://www.adhd-navi.net/index.html
繰り返しますが、『クリスタルチルドレン』という概念を世間一般に無批判に広めることは、発達障害に対する無知と偏見を広めることに他ならないんです。
そんな概念を広めるよりは、きちんとした発達障害についての知識を広めた方がずっと良い。
無責任な愛は、迷惑でしかないってことです。
最後に、自閉症やAD/HDについて、書籍の紹介を。
ドラマにもなったので、有名かと。自閉症の子どもや家族の状況がよくわかるので、多くの方に読んでいただきたいマンガです。現在13巻まで。
この「ふしぎだね!?◯◯のおともだち」シリーズは、障害の特徴と行動をマンガで解説していて、子ども向けなのですが、大人が見ても充分参考になります。学校図書館にシリーズでそろえてもらいたい本。
(注)いくつかのブログで見つけたクリスタルチルドレンについての説明です。
バーチューのサイトにはないのですが、全く同じ内容で記載されているんで、書籍に載っているのかもしれません。
・インディゴ世代の次(1995年~)に生まれてきた魂
・オーラは、何色ものパステル調の色合いを含み、オパール色(乳白色)に輝いている
・楽しく、愉快で、おおらか
・インディゴと共通しているのが、感受性が高く、霊能力があるところ
・至福に満ちていて、情緒が安定して穏やか
(たまに癇癪を起こすことはあっても、たいていは寛大でおおらか)
・テレパシー能力あり、そのため言葉を話しだすのが遅い傾向がある
・クリスタルや石に興味をもつ
・人とのつながやりを好み、話好き
・抱き締めたり、ケアをしてもらいたがっている人を、自発的に抱き締め、思いやりを示す
・愛に満ちていて、あけっぴろで、気取らない
・普通の食べ物より菜食を好む
えっとー、これに当てはまるんだったら、自閉症じゃない気がします…(苦笑)
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